認知症の方が線路内に立ち入り列車を止めた場合に、莫大な賠償金が請求される場合があります。これに対応する保険として、東京都の葛飾区に在住の方限定ですが、区が無料で保険を提供しています。認知症となった方のための保険です。詳しく確認していきましょう。
保険の概要
「おでかけ安心保険」という名称で東京都葛飾区が提供しています。
認知症による徘徊に起因する鉄道事故等を発生させ、ご家族が損害賠償責任を負うことになった場合等に補償される保険です。保険料は区が負担します。
<補償内容>
1.個人賠償責任補償 【補償金額 最大5億円】
例)誤って線路に立ち入って電車を止めてしまい、遅延・運休を伴う営業損害の損害賠償請求を家族が受けた場合
2.傷害の補償【補償金額 最大50万円(後遺障害は程度により2~50万円)】
3.被害者死亡時の見舞費用の補償 【補償金額 15万円】
<費用>
無料
保険の特徴
なんといっても「無料」という点がありがたいですね。
また、個人賠償責任補償の金額が「最大5億円」という点も注目です。
比較するとしたら、一般的な個人賠償責任保険ですと、最大1億円と設定されている保険が多いですが、このおでかけ安心保険は鉄道への影響という点に特化しているため「5億円」と破格です。
保険自体は、保険会社が提供しています。葛飾区在住の方がこの保険に入るのは無料ですが、保険料は区が保険会社に支払うことになります。過去にニュースでも取り上げられていましたが、区はこの保険関連として270万円の予算を計上したようです。
保険に入れる条件
保険に入るためには、下記の条件を満たす必要があります。
・区内在住の方で認知症であること(認知症の診断を受けていて、チェックリストの項目に該当すること)
・おでかけ安心事業に届出すること
所定の届出書を提出すると、「おでかけ安心シール」というものが発行されるので、これを認知症の方が普段身に着けている「靴」や「杖」などの持ち物に貼り付けます。
万が一、行方がわからなくなった場合は、警察や専用のコールセンター(24時間対応)と連携して対応してくれます。
サポート体制もしっかりしていますね。
葛飾区でない人は何の保険に入ればよい?
この保険に興味があっても、葛飾区ではないしどうしよう?と思いますよね。
また、いまはやっている「個人賠償責任保険」に入れば補償されるのでは?と思った人もいるかもしれません。
しかし、個人賠償責任保険では、相手を傷つけたり、相手の物を壊した場合に補償される保険となっています。
そのため、認知症の方が例えば線路に立ち入って、列車をとめて運行に影響を与えた場合は営業的な損害であり、物を壊したわけではありません。そのため、個人賠償責任保険では補償されません。
この葛飾区の保険は、物を壊した場合ではない、運行に影響を与えた場合の被害金額を補償することができる保険ということなんです。
このような保険は最近発売されるようになってきています。
例えば、三井住友海上の火災保険「GKすまいの保険グランド」に特約としてつけることができます。「日常生活賠償(電車等運行不能賠償追加型)特約」です。
費用としては年間で数千円程度のようです。
認知症に特化した保険もある
認知症の方に特化した保険があります。
リボン少額短期保険株式会社から発売されている「リボン認知症保険」です。
この保険の上限金額は1,000万円ですが、内容をみると下記になっているので、列車を止めてしまうような場合にも補償されると思われます。
<リボン認知症保険の補償内容>
1.法律上の損害賠償金
2.損害防止費用
3.請求権の保全、行使手続費用
4.緊急措置費用
5.争訟費用
6.協力義務費用
保険料ですが、最大500万円補償プランが年間19,800円、最大1,000万円補償プランが年間24,800円となっています。
上限としては1,000万ですが、さきほどの三井住友海上の保険は特約のため、そもそも火災保険に入らないとダメです。
しかしリボン認知症保険は、単独で入ることができるためお手軽です。
個人賠償責任保険でも補償されるケースもある
せっかくなので、個人賠償責任保険で補償されるケースがないか考えてみましょう。
例えば認知症の方が、他人のものを壊してしまった、ようなケースが考えられます。
この場合は、物を壊しているので個人賠償責任保険でも補償されるはずです。
個人賠償責任保険は、安いものだと月々数百円で入れます。
おすすめはJCBの「トッピング保険」という名称の個人賠償責任保険です。
JCBブランドのクレジットカードを保有している方だけが入れる保険なのですが、1か月150円と大変安い値段設定です。
JCBのトッピング保険については、下記の記事を参考にしてください。
COOP共済では、個人賠償責任保険を特約としてつけることできますが、こちらも安いです。
まとめ
今回紹介した葛飾区の「おでかけ安心保険(認知症保険)」のようなサービスは、中野区でも提供される予定でして、このようなサービスは他の自治体にも広がっていくと思われます。認知症の方を持つ家族の方は、自分の入っている保険を見直してみたり、今回紹介したような保険の検討もしてはいかがでしょうか。
保険は何でも入ればよいものではありません。個人的には、生命保険・自動車保険・個人賠償責任保険は、少ない保険料で高額な出費に備えることができるので、必要な保険だと考えています。中でも個人賠償責任保険は少額で入ることができます。
本日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
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