6月に金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループにて報告された「高齢社会における資産形成・管理」という報告書についてまとめました。これまでテレビや雑誌、ネット等でさんざん語られてきましたが、少し落ち着いてきたので、本質的な部分も含めて、まとめとしてお伝えします。
これさえ読めば全部わかる内容に仕上げてみました。
目次
そもそもなぜ大騒ぎしているのか
報告書では、老後にもらえる年金だけだと、死ぬまでに生活費として2,000万円不足すると書いてあります。この部分だけ注目されていますが、書いてあることで大事な点はこのことではありませんでした。後述します。
私たちも詳しくは認識していなくても、老後は年金だけだと生活費は足りなくなるのではないか、とうすうす気づいていた部分もあると思います。直接の原因はマスコミが騒いで話を大きくしたように見えます。私たちが気にしていたことを、公的に金融庁から発表され、マスコミがネタとして書きやすい内容だったため飛びついたという感じです。また、野党も与党に対してこのマスコミ記事を元にしてかみつくことで、世間的に注目を浴びることになりました。
2,000万円不足する根拠
総務省の調査による「高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)」の収入から支出を引くと、約5万5千円不足するというデータをもとに計算されています。
出典:総務省 家計調査(2017年)
1年で不足する金額 ⇒ 5万5千円/月×1年(12か月)=66万円
60歳まで生きていた方の4人に1人が95歳まで生きることより
定年65歳から95歳までの30年分必要として計算30年で不足する金額 ⇒ 66万×30年=1980万≒2,000万
実際の男女の平均寿命はもっと低いため、あくまで可能性として95歳まで生きた場合に必要となる生活資金です。
平均寿命は…
男性約81歳
女性約87歳
長生きすることで、生活費が不足することは事実として受け止める必要がありそうです。
報告書が伝えたいこと(ポイント)
私が報告書を全部読んでみて理解した「報告書が伝えたいこと(ポイント)」は下記です。
・年金だけだと老後の生活費は足りない。
・実は老後って30年近くもある。(寿命が延び、人生の3分の1まで増えてきた)
・老後に、認知症などで治療を受けたり、施設に入る場合にお金がかかるということ。
・老後も医療費がかかる。
・働ける現役世代のときから投資でお金を運用すべき。
・老後(65歳以上)も働いて収入があるとよい。
・老後もお金の運用を継続すべき。
・お金の知識をつけよう。
・お金を投資で運用する場合は、長期・積立・分散投資がよい。
・銀行や保険屋ではなく、第3者の視点で客観的にアドバイスを受けることができるアドバイザーに意見をもらうとよい。
・人生におけるライフプラン、マネープランというものが大事だが、その標準的なモデルがない。どのようにお金を貯めていけばよいかの、モデルケースが不足していて、世の中に浸透していない。
いっぱい書いてしまいました…。
まとめると、日常生活のお金の使い方を見直し、家計の分析と計画(ライフプラン)を作成し、将来を見据えて一部を貯蓄や投資にまわすなどしてお金を増やせるように取り組んでみてはどうか?
早く取り組めばその分、老後の生活費として増やせる可能性もある、と提言しています。
報告書が生んだ誤解・影響
金融庁としては、「年金だけだと老後の生活費が不足する」という客観的な事実と、その対応として「投資に取り組もう」と促したい考えだと思います。そのために、NISAやつみたてNISA、個人型確定拠出年金(iDeCo)などの制度がつくられてきたはずです。ですが、今回の報告書では「年金」だけが注目されてしまいました。それにより、年金の制度自体に問題があるのでは?とか、現役世代が年金の原資となって支えているという制度の根幹部分にまで注目されてしまっています。
ただし、少し時間が経過し、本来伝えたかった部分である投資に取り組もうという部分にも関心が集まってきている気がします。最終的には金融庁がのぞむ方向にいくかもしれません。
アドバイザーの必要性
わたしが注目したのは、アドバイザーが必要という点です。
少し前から、保険業が銀行に解禁されて、銀行の窓口で保険を契約することができるようになりました。郵便局でも契約できますよね。また、保険を複数社比較して選ぶことができる「ほけんの窓口」のような店舗型(乗合)保険ショップが多数出現してきています。
このように、金融緩和により我々にとっては一見便利になっているように見えます。
しかし、多様な金融商品が身近で契約、購入できるようになった反面、多数の中から選ばないといけなくなりました。これは、それぞれ銀行や店舗型保険ショップにおいて窓口の人(専門家)にアドバイスをもらって契約すればいいよね?
と思われるかもしれませんが、相手も商売なので、こちらの都合に合わせたりメリットがあるような提案をしてくれない場合もあります。また、そのような提案をしてくれていないことに気づかない、場合もあるかもしれません。
そんなときに、第3者の視点からお客様のためのアドバイスができる人、アドバイザーが必要ということです。アドバイスくれる人って、家族くらいですよね?
そう、そんな人はいないんです。まれにいたとしても少数です。
本来は、独立して業務をしているファイナンシャルプランナーが適任だと思います。でも数が少ないのが課題ですね。
厚生労働省から発表されたこと
今回の金融庁の発表と、ときをおなじくして、厚生労働省は7月2日に2018年の国民生活基礎調査の結果を発表しました。
この発表において、年金や恩給をもらっている高齢者世帯において、これらの収入が総所得の全部であると答えた割合は51.1%と過半数でした。
出典:厚生労働省 国民生活基礎調査(2018年)
要するに、老後の生活費は、年金だよりの人が多いという結果です。厚生労働省も、老後が年金だけだと生活費が不足する場合があることを伝えているように思えます。ちなみに、国が用意している投資の制度としては、下記とおりです。
金融庁⇒NISA、つみたてNISA、ジュニアNISA
厚生労働省⇒iDeCo
金融庁と厚生労働省は、協力して老後の生活費が増える取り組みに力を入れています。
金融庁の報告書では、若いうちから投資活動に取り組み、老後の生活資金を補完するように知識や経験を積んでいくべきだと提言しています。そうすることで、年金以外の貯蓄が準備できるということです。
そもそも自分は年金がいくらもらえるの?
自分が老後(現在だと65歳以降)にもらえる年金の金額は、確認することが可能です。一番手っ取り早い方法は、「ねんきん定期便」を確認すればよいんです。毎年、自分の誕生日月に合わせて、ねんきん定期便は届きます。自分のねんきん定期便を確認してみてください。これまで年金のために支払った金額と、将来の年金受給の見込み額が記載されています。
ねんきん定期便については、こちらの記事を参考にどうぞ。
2,000万円貯める方法
仮に、報告書のとおり平均額である2,000万円が不足すると仮定した場合に、どのように2,000万円をためればよいのでしょうか?
代表的な方法は、下記の3つです。
・銀行の定期積立
・個人年金保険
・投資信託
これらのどれを利用すればよいのか?記事にまとめました。
こちらの記事を参考にどうぞ。
この記事では、1,500万円をためる方法となっていますが、考え方は同じです。
まとめ
今回の報告書は読んでみるととても面白い内容でした。年金が不足するという不安や、制度上の問題があるかもしれませんが、金融庁という組織が長めの資料で提言をしているということはそれだけ重要な話なんだとあらためて思いました。
老後の生活費が足りているのか、不足ているのか、不足しているならいくら不足するのか、は人によって全く異なります。今回のタイミングで老後の生活費について考えてみてもよいと思います。
本日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
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